時計のポリッシュ磨きや、ヘアライン加工はやりすぎるとケース(外観)が痩せてしまいます。
オーバーホールを行ったさい磨き直しを一緒に頼む方は多いですよね。
大事な時計なので新品に近い状態にして使っていたい気持ちは分かりますがポリッシュやヘアラインの磨き直しは最大で5、6回前後までケースのフォルムを保てるのは3、4回まででと言われています。
細かいスリ傷の磨きではバッファーやリューターといった高速回転をする機械をつかいます。上の写真はリューターです。
バッファーは大きめの機械でタイヤの様な円状のものが回り続けますが、リューターはペンを大きくしたくらいで、細かい部分まで磨けます。歯医者で歯や銀歯などを磨く時に使ってる、あの機械もリューターです。
これらの機械に布、皮といった柔らかいバフを装着させ研磨剤を塗り付け、時計のケースやベルトをあてて磨いていきます。
上の写真は研磨剤です。自分で手入れする時にコンパウンドスを使う人も多いですが、一般的には上の写真のような白棒や青棒といった研磨剤を使います。
布、皮を使って磨くのでそんなに痩せないんじゃないの?って思う方もいますが、あてているだけで結構金属が減っていきます。
上の写真は私のリューターですが、高速回転で同じ所を1分ほどあてたら、ソコだけ滑らかに凹みます。1分も磨き続けると金属がかなり熱くなります。
時計磨きでは歪みなく均等に磨くことが大事で技術が必要な作業です。
また深い傷や打つけた凹みの場合、紙ヤスリを使った磨きになります。
400番→600番→800番→1000番と目のあらいヤスリから削る事になります。
400番の荒さは目でみてゴリゴリ削っているっていうのが分かるレベルです。
ロレックスやIWC、パネライなど高級機械式時計は一生ものというフレーズは誰でも一度は聞いた事があるかと思います。
確かに30年前後のヴィンテージウォッチや50年前以上前のアンティークのロレックスが現在も動く状態の商品として流通しヴィンテージやアンティークウォッチ市場とし確立されている事を考えると、思わず頷いてしまいます。
しかしこの【一生】という言葉には注意が必要です。
機械式時計はメンテンスを怠らなければ、永久に使えるといった錯覚をしてしまいがちですが、そんな事はありません。
故障したパーツを作り直し、使い続ける事はできますが、機械式腕時計には寿命があります。
機械式時計の寿命といえば、ムーブメントが最も重要と思う方も多いですがケースにも注意が必要になります。
通常オーバーホールをする際に小傷があれば、ポリッシュをかけて傷を消してもらったりします。
このポリッシュ作業は、いってしまうとケースを削って均すことです。金属を一枚剥くといっても大げさではありません。
当然ですがポリッシュをかければかけるほど、ケースは痩せ細っていくことになります。
防水性の維待を考えると、ケースを磨ける限界は5回と言われています。
5年に一度の期間にオーバーホールをしたとしてケース磨きも一緒に行ったとすると、おおよそ30年ほどでケースの限界となってしまいます。
ヘアライン仕上げはポリッシュの様に光沢がないので、そこまで削っていない様にみえますが、そんな事はありません。
ヘアラインの加工は一度ポリッシュに近い状態まで磨き上げてから紙ヤスリやタンポポという道具を使いラインをつけます。
しっかり磨き上げてからヘアラインをいれないと、もともとあった傷とヘアラインが混ざってしまって汚いですよね。
ヘアライン仕上もポリッシュ同様、行いすぎるとケースの痩せに繋がります。
ロレックスでもブライトリングでもグランドセイコーでもアフターパーツのストック期間は決められています。
と製造中止になってから、ある期間がすぎるとメーカーでは修理部品を処分してしまいます。
5年に一度オーバーホールを行いそのつどポリッシュ磨きを行った場合購入から30年になりますので、ケースも処分されている事が十分に考えられます。
なかには、IWCやパテックフィリップのように自社製品であれば、アンティークウォッチでもメンテンスをする。と名言しているブランドもありますが、あらたにケースの製作や購入となると10万、20万と高額料金がかかる事が想像できます。
いずれ売却を考えてるって方も研磨のしすぎは注意が必要です。
上で説明した通り、ポリッシュ磨きを行い過ぎるとケースが痩せてしまいます、ベゼルの研磨も間のくぼみが少しずつ空いてしまい時計の表情が変わってしまいます。
買取販売店では擦り傷の確認はもちろんしますが、それと同様に研磨のし過ぎでケースやベゼル、ベルトが痩せていないかもチェックしています。
当然ですが、痩せすぎた時計のほうが価格は下がってしまいます。
自身で時計を磨く事は可能です。バッファーやリューターを使わないのでピッカピカには出来ませんがその分、金属の減りも少なく抑えられます。
ベルトをバネ棒外し外してから、毛先が柔らかい歯ブラシを使い蓄積した汚れをとります。
蓄積した汚れは汗を含んでる事がありそのままにしていると、金属の表面が劣化して錆びてしまいます。
特にラグの内側やバックルの隙間など細かい蓄積した汚れは詰まっているので綺麗に取ってあげましょう。
歯ブラシで取りにくい場合は爪楊枝などを使い丁寧に落とします。力を入れすぎると傷がついてしまので注意してください。
腕時計のサビの原因は汚れや汗を放置してしまうことから起こります定期的に歯ブラシやクロスを使い汚れを取ってあげる事が大切です。
大きな汚れを取ったら、市販されているステンレスみがきクロスを使へば大分綺麗になります。
ヘアライン仕上げやマット加工ものを磨くとツヤが出てしまい仕上げ加工が薄くなったり、メッキされている所だと禿げてしまうので気を付けてください。
磨きクロスは金用、真鍮用、ステンレス用と素材別に分かれています。
これがステンレス用です。
コンパウンドは柔らかいクリーム状の研磨剤です、ブレス部分を磨く分には良いですが。ヘッドを磨く際は風防とケースの隙間に挟まる事もあるので注意が必要です。
コチラがステンレス用のコンパウンドスです。
オーバーホールの際、ピカピカで手元に帰って来てほしいのでポリッシュを依頼する人も多いですが、ポリッシュはいってしまえば外観を一枚剥くといってもよい研磨です。
最大でも5、6回が限度の為、オーバーホールの際、毎回お願いするのはあまりおすすめできません。
研磨でのケース痩せは気になりる方は、オーバーホールの際に「研磨は軽めにお願いします」や「簡易磨きでお願いします」と伝えると良いと思います。
こちらの、修理工房は国家試験である時計修理技師1級の方がオーバーホールを行っています。
ポリッシュ仕上げも行っていますが、工房独自のオリジナルクリーニングや、研磨は軽め、などこちらの希望どうり対応してもらえます。
またオーバーホールの価格もメーカーより2、3万円安く設定されていますので、是非参考にしてください。
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