ウォッチブランドとしてのシャネルの歴史は、女性向けの腕時計から始まりました。記念すべき第一号が、1987年に誕生した「プルミエール」です。
身体を締め付けるコルセットやロングドレスなど、既存のファッションの枠組みから女性たちを解放した女性創業者、ガブリエル・シャネル。彼女のエスプリをブランドの隅々まで行き渡らせるシャネルが女性たちのために生み出した腕時計は、やはり画期的なものでした。それまで腕時計業界では、男性用腕時計を小型化したものを女性用時計とするなど、メンズウォッチありきの発想がさほど珍しいものではありませんでした。しかしシャネルの「プルミエール」は最初から女性のためデザインされています。
パリのヴァンドーム広場から着想を得た八角形のケース。インデックスを取り除いたシンプルな洗練性。シャネルのブランドアイコンのひとつといえるチェーンを使ったブレスレット。機能美とエレガンスを併せ持つシャネルらしい逸品として、誕生から現在に至るまで、プルミエールはデザインバリエーションを増やしながら世界中の女性たちから愛され続けています。
一部ムーブメントを自社製造するようになったシャネルは、腕時計ブランドとして非常に優秀です。レディスウォッチであるプルミエールも、きちんとメンテナンスをしながら適切な使用方法・保管方法を守っていれば、何十年と使うことができる腕時計です。
一生物の時計として愛用できるからこそ、普段のお手入れとケアが重要になってきます。なぜなら、時計は使っていない時でも常に動き続けているので、時間の経過につれて自然と摩耗や劣化、さびなどが出てくるものだからです。おお手入れを怠っていれば故障などの原因になります。
今回の記事は、シャネルのプルミエールのアンティークやヴィンテージの時計をすでに所有している方、またはこれから入手したいと考えている方のために、オーバーホールの依頼について解説していきます。シャネルの公式リペアサービスのほか、よりお得にオーバーホールできる実力派のお店はどこかなども説明していますので、ぜひご参考にしていただけたら幸いです。
シャネルは、顧客の時計のメンテナンスを請け負う部門「シャネルリペアサービス」を公式に有しています。
「リペアサービス」はさらに2つに大別されており、防水機能検査や不具合部品の交換、超音波洗浄など基本的な調整を行う「メンテナンスサービス」、そして時計内部を分解してから行うムーブメントの調整やクリーニングなどオーバーホール全般を担う「トータルサービス」から成ります。オーバーホールを依頼するなら「トータルサービス」を選ぶと良いでしょう。
シャルの公式リペアサービスへは、シャネルブティック、シャネル ファイン ジュエリー ブティック、もしくはシャネル ウォッチ正規販売店に時計を持ち込むか、オンラインで申し込みを行えば対応してもらえます(いずれの場合も、保証期間内でオーバーホールを受ける場合は、保証書に必要事項を記入して持参してください)。シャネルリペアサービスでオーバーホールまたは修理を受けると、24カ月間の修理保証がついてくるので安心です。
シャネルリペアサービスにオーバーホールを依頼するとどれくらいの費用感になるのでしょうか。あくまで目安ですが、下記の金額を参考にしていただけます。
なお、アンティークやヴィンテージの時計をオーバーホールしてほしいときは、これよりも少し価格は高くなる傾向にあります。アンティークやヴィンテージの時計は、細かい傷や摩耗、ゆるみがどうしても生じてきますし、もともと備えられている防水機能や耐磁性機能が現行品よりも劣っていることがほとんどです。そのためオーバーホール時にはデリケートなケアが必要になりますし、さらに時計の状態や年数によっても金額が変わってきます。
<シャネルリペアサービス「トータルサービス」の料金目安>
バッテリー交換 | クォーツ式ムーブメント | 機械式ムーブメント |
---|---|---|
6,600円~ | 40,700円~ | 49,500円~ |
アンティークやヴィンテージの腕時計は、各部品に小さな不具合や劣化が見つかることが多いです。見た目や実際の使用時には影響がないと持ち主が思っていても、シャネルの公式リペアサービスとしては見逃すわけにはいきません。公式サービスにオーバーホールを依頼すると、内部の部品のいくつかは交換されることになり、別途交換費用が上積みされていくものだと基本的に考えておくべきです。
そのモデルの製造が終了していて、部品の保有期間が切れてしまっている場合は、代替品を使って部品交換を行うか、あるいは交換そのものが不可能になるケースがあります。
また、シャネルのムーブメントは自社製のものか他社製のものかで、価格に差が出てきます(自社製ムーブメントのほうがオーバーホール金額が高くなるのが基本的な考えです)。アンティークやヴィンテージのように製造年が古い時計の場合は、他社製の汎用ムーブメントが内部に使用されていることが多いです。
補足になりますが、腕時計のオーバーホールの適切な頻度は、クォーツ式は4~5年、機械式時計は3~5年ごとに実施することが推奨されています(シャネルでは基本的に4~5年ごとのオーバーホールをおすすめしています)。
シャネルリペアサービスにオーバーホールを依頼すると、ブランドに所属する技術力の確かな時計修理職人にメンテナンスをしてもらえます。部品交換に使われるパーツは純正品で、修理保証もあるので安心なことが多いです。
しかし、公式リペアサービスのオーバーホール費用は高く、予算的に合わないという方は少なからずいらっしゃいます。また、部品保有期間が超過していて、部品のストックがないから対応できないと断られる可能性もあります。
より安価に、しっかりとした技術力でオーバーホールしてもらえる依頼先はあるのでしょうか?
本記事では、そうした疑問を持っている方のために、おすすめの時計修理専門店をご紹介いたします。
時計修理専門店は全国展開の大手チェーンから、地元の人に愛されている個人店まで、規模やタイプがさまざまあります。
オーバーホールを依頼したときの平均相場は2万円後半~3万円ほどが目安となります。ただ、料金と納期は時計修理専門店によって異なるので、あくまで目安としてご参考ください。それでもシャネル公式リペアサービスに依頼した場合の半額近くまで安くなることもあります(部品の交換が必要になった場合は別途費用がかかります)。
また、正規ブランドでは部品保有期間が終了しており、部品の交換に対応してもらえないという時も、時計修理専門店によってはシャネルの時計のパーツを独自に保管しているというケースがあります。さらに、旋盤を所持しており、自社で一から製造して腕時計にぴったり合うパーツを提供してくれるサービスを行っているところも。
シャネルの時計を扱う経験を多数積んできた時計修理専門店を見つけることができれば、プルミエールのアンティークやヴィンテージの時計も安心してオーバーホールを依頼することができますよね。
このように、腕時計修理専門店では、正規のシャネルリペアサービスよりも費用を抑えてオーバーホールしてもらうことが可能になります。しかし、一点注意が必要なのが、お店によってサービスの品質や技術力にばらつきがあるというところです。
できれば、オーバーホールを実際に依頼するより前に、その時計職人さんがどれくらいの実力を持っているのかを知りたいですよね。判断の一つの目安として、その職人さんが「1級時計修理技能士」の資格を保有していれば、基本的に安心して依頼できると考えて問題ありません。
「1級時計修理技能士」は国家資格のひとつで、3級から1級まであります。1級は実務経験が7年以上ある技能士が取得することができます。あるいは、3級取得後の実務経験が4年か、2級取得後の実務経験が2年ある技能士も取得することができます。いずれにせよ、きちんと知識と経験を積み上げて実力が認められている技能士だけがとることができる資格ということです・
1級時計修理技能士の資格保持者は、年代物の腕時計の修理も担当してきているでしょう。シャネルの時計を扱った経験があったり、プルミエールの修理に慣れていたりする職人さんと出会うことができれば最も安心ですね。
市井の時計修理専門店の中には、世界的な時計ブランドや百貨店からオーバーホール業務を委託されているところもあります。時計修理専門店はうまく見極めることができれば、腕前が最高レベルの時計修理職人さんと一生のお付き合いができるかもしれません。
「時計修理専門店にオーバーホールを依頼するのが良いということはわかった。でも、良いお店を見極めるにはどうしたら良いのだろう?」
こうした疑問を抱かれた方もいらっしゃると思います。本記事では最後に、プルミエールのアンティーク・ヴィンテージ時計をオーバーホールしたいと思っている方に向けて、おすすめの時計修理専門店をご紹介いたします。お店のまとめは次の記事に記載していますので、参考にしてみてください。
この中でも特に、「クラフトワーカーズ」というサイトがおすすめです。クラフトワーカーズは、日本各地の優良な時計職人さんを選りすぐって紹介している、時計修理職人の総合サイトです。特徴として、時計職人さん一人一人と直接交渉し、オーバーホールの技術と費用・納期などさまざまな条件に自信があると回答した職人さんに許可をとって掲載している点があります。
クラフトワーカーズの便利なポイントに、複数の時計職人さんからの見積もりをまとめて取り寄せて比較できる点があります。金額や費用の希望と照らしあわせて、自分で納得のいく依頼先を見極めて選ぶことができるのです。
シャネルのプルミエールは、すたれることのない洗練とエレガンスで輝き続ける稀有な時計です。この先ずっと愛用し続けられるように、オーバーホールは定期的にきちんと行いましょう。どの業者にオーバーホールを依頼するかは、すぐれた時計修理職人さんとの出会いが肝心です。ぜひ本記事を参考になさってくださいね。
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