ロレックスという腕時計ブランドが確立されたのは1908年。現在の腕時計に採用されている数々の技術・スタイルを創り出し、腕時計の歴史を切り拓いてきたロレックスの発明の中で、やはり最たる注目を集めるのは「オイスターケース」と「パーペチュアル」でしょう。
二枚貝(オイスター)に由来する名前を冠するロレックスのオイスターケースは、金属の塊をくりぬいた完全密閉のケースに、リュウズと裏蓋がねじこみ式になっていることで世界初の完全防水ケースを実現。これにより、水や汗、埃の多い環境においても腕時計を着用したまま作業ができるという新たな実用性が生まれました。
しかし、オイスターケースにはまだ一つ弱点がありました。それは、当時の機械式腕時計が手巻き式であったこと。リュウズを緩めたり締めたりする際、密閉ケースの隙間口となって湿気や汚れが時計の内部に侵入する可能性がありました。また、ゼンマイを巻いた後のリュウズのねじ込み忘れも珍しくありません。
この難題を解決すべく、次にロレックスが生み出したのが、360度回転するローターを備えた全回転機構の「パーペチュアル」です。ゼンマイを巻く必要がない、世界初の腕時計の自動巻き機構で、その後の時計産業界で採用される規格となりました。
そして、オイスターケース、パーペチュアル、クロノメーター証明書などロレックスが築いてきた金字塔をすべて搭載した記念すべきモデルが、1945年に誕生しました。これが「デイトジャスト」です。午前0時付近で瞬時にカレンダーが切り替わるデイトジャスト機能を搭載しており、3時位置に日付を表示する小窓はその後のロレックスを代表する代表的なデザインのひとつとなりました。
「何十年経っても資産価値が下がらない」と名高いロレックスですが、その中でもドレスウォッチのオイスター パーペチュアル デイトジャストは時代や情勢に左右されない安定した価値を誇っています。年代物でもデイトジャストはムーブメントの質が高い実用時計として群を抜いており、アンティークモデルを持っていると一目置かれること間違いありません。
アンティークのデイトジャストを長く使い続けるために大切なのがオーバーホール。この記事では、デイトジャストのアンティーク時計を持っている方や、これから入手したいと思っている方のために、オーバーホールのポイントや注意点、おすすめのお店をご紹介します。
アンティークやヴィンテージの腕時計は、適切な使用方法で、適切な保管や管理の環境が整っていれば、日常使いにも耐えられる実用性をある程度維持できます。ただし、やはりどれほどハイスペックな腕時計だとしても、現行品に比べたら取り扱いの際に気をつけるべき点は多くあります。
たとえば耐水性です。高い防水性をうたっていても、年代物の時計はプッシュボタンやリュウズの緩み、ガスケットの経年劣化が発生しやすく、こうした隙間から水分や湿気が時計の内部から入り込むことがあります。雨の日にアンティークやヴィンテージの時計をつけて出かけたら針が動かなくなってしまった、ということは珍しくありません。
また、湿気の多い日や梅雨のシーズンではたとえ屋内でも、時計を机の上に出しっぱなしにしていたらいつの間にか故障していた、ということも。これも湿気が時計内部に入り込んでしまった可能性が考えられます。
こうしたことが起こらないように、時計は専用のケースに収納し、適切な温度・湿度のもと保管しておきましょう。
また、耐磁性も気にかけるべき点です。スマートフォン、タブレット、パソコンや、スピーカー、電子レンジ、テレビなどは強い磁気を発する機器・家電で、腕時計のヒゲゼンマイの渦巻きを磁化させてしまうという危険性があります。腕時計にとっては負担が大きいいので、特にアンティークやヴィンテージの場合は、近くで使用しないほうが良いでしょう。長時間デスクワークをする際や、家電を使って料理をする際は、原則として腕時計は外しておくことをおすすめします。
精密機械の腕時計は、私達の使用の仕方や保管状況からの影響が積み重なって、耐久性や実用性に響いていくものです。ずさんに扱ったりメンテナンスを怠ったりしていると、どれほどハイスペックな時計でも早いうちから劣化や摩耗が進んでしまいます。不具合が発覚してから慌てて修理に出したものの、二度と使うことができなくなってしまっては残念ですよね。適切に使われ、保管され、また定期的にメンテナンスを受けていれば、アンティークやヴィンテージの腕時計でも高い機能性や美しさを長く楽しむことができるのです。
ただし、ちょっとした点検や調整のつもりでも、時計は自分で分解してはいけません。非常に繊細な機械なので、時計修理のプロフェッショナルに必ず依頼しましょう。
腕時計を長期にわたって使用したいのであれば定期的なオーバーホールによるメンテナンスが必須となります。機械式腕時計であってもクォーツ腕時計であっても同じです。
「落としたりぶつけたりしたことはないし、保管も丁寧に行っているから、オーバーホールはまだしばらくやらなくてもいいんじゃないかな」という油断は禁物です。時計は常に歯車やゼンマイの摩耗、パーツの経年劣化が起こるからです。オーバーホールでは、主に時計の分解、内部の点検、掃除、調整などが行われ、時計の内部で部品の摩耗・劣化などが見つかった場合はその箇所の交換や修理も行ってもらえます。
適切なオーバーホールの頻度として、一般的にはクォーツ腕時計は5~6年に一度、機械式腕時計は3~5年に一度のペースで行うといいと考えられています。ロレックスでは3~4年に一度を推奨しています。
アンティークやヴィンテージなど年式の古い腕時計は、これよりも多い頻度でオーバーホールを行うようにしましょう。また、時計の調子があまりよくないと感じたら、すぐに点検してもらうことをおすすめします。わずかな不具合を放置しておくと他の部品にも負荷がかかってしまい、やがて故障に繋がりやすいためです。初期の不具合の段階で修理しておけば費用も低く抑えることができます。
ロレックスの正規品販売店とロレックスの支社では公式でアフターサービスを提供しています。日本では東京・丸の内にある「日本ロレックス」にオーバーホールを依頼します。遠方にお住まいの方は、公式サイトから依頼をすれば梱包キットを無料で自宅で届けてもらえます。
ロレックスの正規サポートに修理を依頼する最大のメリットは、ブランドの時計技術者が確実なメンテナンスを施してくれることでしょう。部品の交換で他社製品を代替品として使うこともないため、完全な正規品として直してもらうことができます。また、「正規修理保証書」が発行され、もしロレックスの時計を手放すことになっても高く売却することができます。2年間の保証期間も新たにつきます。
しかし注意が必要な点は、生産終了モデルの扱いです。なぜなら、これまでロレックスは生産終了から25年以上経過したモデルは、交換できる部品の保有期間が切れてしまうことを理由にオーバーホール・修理を受け付けていませんでした。それが2021年からは、スイス本国(ジュネーヴ)のロレックスに送ればメンテナンスが可能になりました。
問題は、その修理費が価格100万円からと高額になることです。また、納期も最短で1年と、腕時計を修理に出してから帰ってくるまでの時間が長くかかります。さらに、一旦ジュネーヴに送ったら依頼をキャンセルすることはできません。
また、25年以上前のモデルではないヴィンテージウォッチでも、文字盤のインデックスをトリチウムからルミノバに書き換えられてしまうなど、ヴィンテージロレックスならではの風合いがなくなって資産価値が落ちてしまうこともあります。
ロレックスの正規のサポートを受けると、ヴィンテージロレックスの価値が低減してしまったり、海外に送らなければならず高額・納期が想定外になってしまったりする恐れがあることがわかりました。それでは、こうしたことを避けてオーバーホールを受けるためにはどうすれば良いのでしょうか?
解決策の一つが、時計修理専門店に依頼することです。ロレックスのように世界的な知名度のあるウォッチブランドは、パーツなどを専門店のほうで確保している場合があります。老舗の時計店であれば部品を在庫として確保していることがあるため、そうしたお店に依頼すれば希望の通りにオーバーホール・修理してもらえる可能性があります。
また、時計修理専門店の中には旋盤を所有している会社もあります。自社で部品をいちから製造することができるため、その時計に最もフィットした部品を作ってもらえます(ただし、すべての時計修理専門店で部品製造を行えるわけではないということに注意しましょう)。
足りない部品を作ることができる、腕の確かな時計修理専門店を一つ知っておけば、ロレックス オイスター パーペチュアル デイトジャストに限らずさまざまなブランドの腕時計を修理してもらえます。まさに「腕時計のかかりつけのお医者さん」のような存在と言えるでしょう。
おすすめの時計修理専門店をこちらの記事で紹介しています。
中でも特におすすめなのは、記事の最後で紹介している、全国の腕利きの時計職人さんたちを紹介している総合サイトの「クラフトワーカーズ」です。クラフトワーカーズでは、時計職人さんと一人一人直接交渉をしたうえで、掲載OKをもらった方を掲載している点が特徴です。技術力・サービス・価格・納期いずれも自信があるという職人さんが集まっているので、安心して依頼先を探すことができます。
また、前述したように自社に旋盤を保有しているという時計職人さんも在籍。交換用の部品を自社製造できるので、ロレックスのアンティークやヴィンテージの時計の修理にも対応してもらえるでしょう。
クラフトワーカーズはとても簡単に利用できます。公式サイトで、時計のモデルの詳細、購入してからの年数、故障の内容、針の状態、オーバーホールを最近受けたのはいつかといった基本情報を入力していきましょう。
次に、「この内容でオーバーホールや修理ができます」という職人さんたちからオファーが届くので、ご自分の希望や予算に合った職人さんを選んでいきます。この時、金額や納期の見積、過去の利用者のレビューなどをまとめて比較することができるので便利ですよ。オファーに返事をするとその職人さんから腕時計を梱包・郵送するためのセットが一式自宅に届けられます(送料無料)。この中に時計を梱包して郵送します。
最終的な金額や見積りが決定するのはこの後です。職人さんのもとに時計が届き、時計の汚れや摩耗、劣化、故障の内容や程度などを詳しく調べてもらいます。職人さんから「この見積りでどうでしょうか」と連絡が来るので、内容に問題がなければオーバーホールの正式依頼を出しましょう。
修理などのすべての対応が終わったら、時計が代金引換で返送されてきますので、支払いを行います。これで腕時計のオーバーホールや修理は完了するので、とても簡単ですよね!
さらに、クラフトワーカーズでは、修理やオーバーホールを行ったあと、1年間の品質保証がついているので安心ですよ。
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