はじめまして、あもね奏と申します。
私は約5年ほど、大手中古ブランド買取店で時計を専門に鑑定していました。店舗に立ってお客さんから商品を買い取る鑑定士ではなく、全国で買い取りされた商品の時計だけを専門に鑑定する部署に所属していました。
そのため、通常の鑑定士よりも圧倒的に触れることのできる時計の本数が多く、これまで4万本以上の時計を鑑定してきました。
しかし最初から時計の知識が合ったわけではなく、入社時は時計の知識はゼロ。この世で最も高い時計はロレックスだと思っていました。
そんな私がどのようにして時計の鑑定士になったのか、また4万以上鑑定する中で特に印象に残った時計などをご紹介したいと思います。
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まず、なぜ時計の鑑定士という道に進んだのかご紹介したいと思います。
実は入社時は、鑑定士としての入社ではありませんでした。もともとは、バッグや宝石、時計などのブランド名やモデル名、型番などの商品名を正しくつけることを専門に行う部署に配属でした。
名前をつけるというと簡単に聞こえますが、日々膨大な量のブランド品をさばかなければなりません。更に時計だけでなく、バッグや宝石、ダイヤのグレード、アパレルなど幅広い知識が必要とされます。そのため、入社時から研修や先輩たちからの指導で徹底的にブランドの知識を叩き込まれました。
しかし入社して数ヶ月立った頃、この部署が解散することになってしまいました。会社都合のため、各メンバーの希望をできるだけ聞き入れてもらえるとのことで、改めて自分が何をやりたいのか考えてみました。そこで私が出した答えが「時計の部署に行くこと」だったのです。
なぜ時計の部署を希望したかと言うと、「一つのことを極めること」が好きであることと、これまでの業務でバッグや宝石、アパレルなどさまざまな種類のブランド品に触れてきましたが、そのなかでも時計に一番奥深さを感じたからです。そのため、時計のことだけを極められる時計の部署へ行きたい!と思いました。
私が時計の部署への移動を希望すると、上司や先輩、同僚たちからも驚かれました。
時計の部署は男性が多く女性は一人もいなかった上に、私は時計の知識が全くないド素人。時計の5大ブランドは、ロレックスが入っていると思っていたような知識レベルです。
当時「これからやっていけるの?」と言われたことを覚えています。それでも自分がやりたいということをアピールし、時計部署へ異動することとなりました。
時計部署へ異動することができましたが、入ってからが大変でした。時計知識ゼロな中で時計の鑑定を行わなければなりません。
ロレックスのデイトナやオメガのスピードマスターなどメジャーな時計であれば、過去のデータから金額を算出できますが、一般的でないブランドや珍しい時計など過去にデータがないものは上司や先輩でもわからないため、徹底的に調べて自分で予測をたてるしかない状況でした。
更に時計部署へ入ってくる時計の中には、まれにコピー品も紛れています。買取時に鑑定士が査定しているため、それをすり抜けてしまっているため、通常のコピー品よりも優れたいわゆるスーパーコピー品であることが多く、それを見抜かなければなりません。
先輩はそういった商品でもぱっと見ただけで「これコピーじゃん」と見抜いていたのを戦々恐々と見ていたのを覚えています。
そこからは日々、時計の勉強をとにかくたくさんしました。
時計の基本的な知識がまとめられた本を買ったり、高級時計雑誌「Chronos」を購読したりと会社以外の時間も使って時計の知識をインプットし、日々の鑑定で知識と照らし合わせていくというのを続けました。
その結果時計を持てばコピーか見抜けたり、社内の時計のテストで最高点を叩き出したり時計の知識を一定以上身に付けることができました。
時計の部署になってから約5年間、時計だけを日々鑑定してきました。そのなかで楽しかったことは、やはり珍しい時計や自分が好きなブランドの時計を鑑定できることでした。
ZOZOTOWNの元社長、前澤友作さん愛用でおなじみのリシャール・ミルや、ロレックスデイトナの4桁なども実際に目にすることができました。
4万本以上、時計を鑑定してきて特に印象に残った時計を3本ご紹介します。
引用:https://piazo.jp
1本目はロレックスデイトナの6264です。言わずと知れた「ポール・ニューマンモデル」として知られるデイトナの4桁であり、レアウォッチとして有名です。私が目にすることができたのが、こちらの金無垢モデルでした。
6264は生産年数が3~4年と短期だった上に金無垢モデルはさらに存在本数が少ないため、かなり希少性が高いと言えます。
当時の金の時計では最高純度となる14金で作られています。今は18金が一般的ですが、この時代は金の加工技術が今ほど発達していなかったため、14金で制作されていたそうです。
時計業界に長く身を置いていても、お目にかかれる機会はほとんどないかなり貴重な1本なので、皆で大興奮だったのを覚えています。
引用:https://www.rasin.co.jp
2本目はリシャール・ミルのバッハワトソンRM055です。リシャール・ミルは、ZOZOTOWNの元社長、前澤友作さんの愛用時計として有名ですね。安くても1000万円以上、高いものだと1億円近くになるブランドです。
私は見たのは、前澤さんと同じモデルのものではなかったですが、やはり印象的な時計でした。文字盤と裏蓋にあたる部分が透明なため、文字盤がまるで宙に浮いているように見えます。
時計本体の重さも驚くほど軽く、重量は82g!100gを切る重さです。一般的な時計の重さが150g前後なので半分ほどの重さしかありません。軽いのは重さだけであって、存在感はバッチリな点も素晴らしいです。
引用:https://www.rasin.co.jp
さらにすごいのは、時計本体だけではありません。付属品である箱もとても立派です。右側の箱は、ウォッチワインダーになっています。
引用:https://ishida-watch.com
3本目はランゲ・アンド・ゾーネのプール・ル・メリットです。
プール・ル・メリットとは、チェーンヒュジ―機構を搭載した時計です。チェーンヒュジ―は日本語に訳すと「鎖引き」。機械式時計の精度を向上させる複雑機構の一つで、構成部品数636、断面寸法0.6×0.3ミリという微細なチェーンを使用しています。
これだけ複雑な機構を備えた時計を実際に見ることができたのは、とても貴重な経験だったと思います。
また個人的にランゲ・アンド・ゾーネというブランドが好きなため、ランゲ特有の繊細かつ美しい時計のデザインと複雑機構を同時に堪能できる1本に誰より興奮していたのを覚えています。
ここまで私の自己紹介を兼ねた、鑑定士としての経験をご紹介させていただきました。
実際に店舗に立って、お客さんから買い取る鑑定士ではなく、時計だけを専門に扱う部署ではなかったため、直接お客様と触れ合うことはなかったですが、時々自社の販売店に行きお客様と会話することでどのような時計を求めているのかを知ることができました。
自分の鑑定した時計が次のお客様へつながっていくのは、小さいことではありますが仕事のやりがいや楽しみになっていました。
鑑定士は、基本的な時計の知識はもちろん、日々変わり続ける時計の相場についても精通していなければならないため、一度勉強して終わり。ではないところが難しいところです。
また他のブランドよりもアンティークや、同じ型番でも製造年や一部分の違いによって大きく金額が変わります。
ですので、小さな見過ごしが大きな金額差へとつながってしまうため、油断ができません。しかし、反面その違いや時代限定のレアを見つけたときの喜びは大きく、より知りたい!という知識欲求へもつながります。
時計に関することをもっともっと知れば、面白さも増していくので、これからもどんどん時計のことを学んでいきたいですね。
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