オメガのダイバーズウォッチ、シーマスターはオメガ社のスポーツモデルの中で、スピマス(スピードマスター)と人気を二分するモデルです。耐久性も高く故障頻度は少ないと言われますが、もし、故障が発生した場合、どうされますか?今回はシーマスターのメンテナンスに焦点を当て、紹介します。
オメガ・シーマスターは1948年に発売された、歴史あるダイバーズウォッチです。1953年発表のロレックス社「サブマリーナ」、ブランパン「フィフティーファゾムズ」というスイス・ダイバーズウォッチを代表するモデルより先行して発表されたことで、ダイバーズの先駆け的なモデルとも言われています。
実はオメガ社は1932年に「マリーン」という同社初のダイバーズウォッチを発売しています。しかしこれをダイバーズウォッチと定義するには専門家やメディアでも意見が別れています。
同じく1948年に発表されたシーマスターも単なる「防水時計」で、ダイバーズウォッチでは無いと言われています。しかし、いずれにせよオメガ・シーマスターは第二次世界大戦後衰退していた、時計各社が生産を本格化させたことを内外にアピールした、モデルであることは間違いないです。
オメガ・シーマスターには2021年1月時点で現行シリーズは「アクアテラ150M」、「ダイバー300M」、「プラネット・オーシャン」、ヘリテージモデルだと、「シーマスター300」、「レイルマスター」など他にも多数あります。
一方ライバルのロレックス社「サブマリーナ」は「シードゥエラー」と2シリーズのみです。この豊富な選択肢が、シーマスターの魅力のひとつだと思います。
現行品のオメガ・シーマスターは優れた精度と耐磁機能を兼ね備えた、マスタークロノメーター認定の腕時計です。
15000ガウスという磁場は医療機器であるMRI(核磁気共鳴画像法)内と同レベルです。これまで検査技師や患者さんは磁気帯びを防止するため、時計を外す必要がありました。このマスタークロノメーターはスウォッチグループ会長だったニコラスGハイエックが、晩年ゴーサインを出した企画です。
オメガの副社長、ジャン=クロード・モナションが2008年過ぎにハイエック会長から(開発の)承諾を貰い企画を進めました。数々の苦難の末、マスタークロノメーターは完成しました。完成から10年以上経過し、「非現実的」と言われたムーブメントですが、今や誰も「15,000ガウスの耐磁機能」をオーバースペックだとは言いません。
さて一般人も使う機会が増えているダイバーズウォッチ。このシーマスターになぜ、300M防水が必要なのかといえば、プロダイバーからの需要も高いからです。
現代のダイビングはダイバーズウォッチ黎明期の頃と違い、潜水管理はコンピューターが主流です。腕に巻く時計型の最新潜水コンピューターも流通していますが、それでもプロはダイバーズウォッチを求めると言います。
理由は潜水コンピューターの電池切れなど予測不可能なトラブル時にバックアップとなるからです。それだけダイバーズウォッチはこれまでの実績もあり、いざという時に頼りになるからなのでしょう。
そして、高い防水機能を維持する修理メンテナンスには最大限の配慮が必要でしょう。
ムーブメント | ステンレス | 貴金属 |
クォーツ(クロノグラフ以外) | 51,700円 | 63,800円 |
機械式(クロノグラフ以外) | 63,800円 | 74,800円 |
クォーツ(クロノグラフ) | 57,200円 | 80,300円 |
機械式(クロノグラフ) | 85,800円 | 108,900円 |
金額は税込価格。2021年1月時点の価格表
さてまず、オメガ社の正規メンテナンスは「コンプリート・メンテナンスサービス」と呼んでいます。上の表が正規メンテナンスの料金体系です。
通常のオーバーホール作業に加え、部品交換時の部品代も含まれる事が特徴です。さらに作業後の保証が、24か月となっています。
ただ24か月保証となっていますが、内容をよく読むと、全てにおいての保証ではないようです。
有償で行ったサービスに関しては(中略)オメガカスタマーセンターが保証対象内の不具合と判断した場合に限り再度部品の交換や調整等のサービスを無償で提供します。(オメガHPより抜粋)
つまりオメガ社が認めない限りは対象とはなりません。
オメガは2018年7月以降に購入した腕時計に関しては5年保証となっています。しかしその間、メンテナンスが全く不要ではありません。特にパッキンに関しては劣化が他の部品に比べて、早く一般的には3~4年ほどで劣化が始まるとされています。
パッキンは時計内部につながる全ての箇所に使用されており、時計内部への浸水を防ぐ重要な部品です。一般的にパッキンの劣化が早くなる要因はユーザーの使用頻度によるところが大きくなります。特にダイバーズウォッチのパッキン劣化は本来の防水機能を大きく損ねます。
前述の「部品代込みの料金体系」は追加料金が無い一方、割高感も否めません。現にメーカー保証は2018年より5年へ延長しています。このこと自体部品の耐久性がアップしている、何よりの証拠です。
そこでもうひとつ考えて欲しい選択肢は、時計修理専門業者によるメンテナンスです。
ムーブメント | オメガ正規サービス | 修理専門業社A社 |
機械式(クロノグラフ以外) | 63,800円 | 35,000円 |
機械式・クロノグラフ | 85,800円 | 40,000円 |
クォーツ(クロノグラフ以外) | 51,700円 | 25,000円 |
クォーツ・クロノグラフ | 57,200円 | 35,000円 |
2021年1月時点の作業料金価格。
結論から言いますと作業内容では両者に差はありません。そしてある時計修理専門業者A社の料金とオメガ正規メンテナンスを比較した作業料金表が上の表です。なぜ正規メンテナンス料金は修理専門業者と比べ、割高なのでしょう?
オメガの正規メンテナンスは同社カスタマーサービスへ直接持ち込む顧客もいますが、百貨店や正規リテイラーで受託した時計も持ち込まれます。
これら受託品に中間マージンが発生することが、割高になる大きな要因です。僕はメンテナンスを百貨店や正規リテイラーで受付するシステムは流通ネットワークが発達していない時代の名残だと思います。
さらに正規メンテナンスは全てメーカー内で修理作業しているわけではありません。一部時計の修理作業は修理専門業者へ外部委託します。そのため割高な料金を貰い、時計の受託数によっては外部委託できるようにしているのです。
それに対して、修理専門業者の料金体系は作業量(三針時計より、工数の多いクロノグラフが割高)+部品代というシンプル・合理的な物です。またメーカーも外部委託するほど信頼の高い修理専門業者へ直接修理依頼すると、中間マージンは発生しません。
以下記事ではオススメの修理専門店を紹介しています。特に記事一番下で紹介しているクラフトワーカーズは複数の時計修理専門会社から優秀な技術者を紹介しており技術者の修理担当暦や取得資格、所属会社まで公開していて本人に直接依頼ができます。
依頼する側は複数の技能士に見積りを頼むことができ、見積もり金額や納期に納得した技能士にオーバーホールを依頼することが可能です。
メンテナンス終了時から1年間の動作保証もつきますし、オメガの純正部品を使用してもらえるのでおすすめです。
時計職人さんを指名できるメリットとしては、担当する職人さんが直接時計の不具合を聞ける事にあります。受付担当から職人さんへ内容(不具合)を伝えるより、直接作業する時計職人さんが内容を聞く方がよりきめ細い修理ができ、顧客にとっても時間や費用の圧縮が実現できるはずです。
オメガ・シーマスターはジェームズ・ボンドを始め、2021年1月に就任したバイデン大統領も愛用する時計として人気上昇中のダイバーズウォッチです。本格的なダイバーズウォッチゆえ、メンテナンスでは高い技術力を持った時計職人さんでこそ、時計の真価が発揮できます。
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