機械式時計のスペックにある石数って何?どんな役割をしてるの?

カテゴリ:知識・雑学

機械式時計は非常に精密で小さな部品が数多く使用されており、それらの部品が複雑に組み合わさり機能することによって動作する実に精度の高い構造をしています。

基本的に動力にはゼンマイを使用し、それを香箱という小形の箱に収納し、テンプやガンギ車など回転する歯車に軸を通して地板と受けで挟み込む構造で構成されています。

これらの軸と接する部分に軸受けとなる穴石を設置します。この穴石が使われている数のことを石数と呼びます。

機械式時計に使われる石とは何か?

大型の精密機械の場合は歯車を安定して回転させるために軸を通しますが軸と接する部分に軸受けとして穴石を使います。

この素材に関しては大型精密機械の場合には金属のベアリング球を使うのが一般的ですが、機械式時計の場合にはケースが小型なので金属では大きさや素材的に無理が生じるのでルビーやサファイアなどの宝石を穴石に使用します。

非常に小型で精密な機械式時計の歯車には、硬度の高い宝石が適しており、これを総称して石と呼びます。

機械式時計における石数の意味は

腕時計に使われてるルビー

引用:https://www.jewelerssupplies.com/

機械式時計の歯車を支えるのに不可欠といえる穴石ですが、昔は宝石が実際に使われていました。

しかし現在は技術の進化から人工ルビーを用いるメーカーが多いです。時計の歯車には無くてはならない部品なので一箇所ではなく必要な箇所には全て穴石が存在します。

この数を石数と呼び、機械式時計の性能が高くなり構造が複雑になればなるほど石数は増えていきます。これは多ければ多いほどその時計が複雑な構造をしており、耐久性が高いことを表します。

この石数は昔のものほど少なく、近代から現代に入るほど多くなるといわれています。

実際は手巻き式腕時計の場合は17石、自動巻き式腕時計でも21~25石あれば十分実用に値するとなっています。

エタの手巻きムーブメント

つまり歯車と軸の回転による地板と受けの磨耗を減らすことが石本来の役割なので、機能が複雑になり構造が多機能になると石数は増える仕組みになります。

現代の複雑腕時計の中には100石を超える石数を備えた腕時計も存在します。

しかし単純に石数が多ければよい時計というわけではありません。機械の能力とそれを支える石数が合致していることのほうが大切です。

石数と機械式時計の歴史の変遷

この機械式時計と石数の関係は長い歴史の中でどんどん変わっており、技術の進化に応じて石数も増加していきます。

1930年代ころの機械式時計の石数は黎明期と同じく7石が必要最低限の石数といわれていました。

よってアンティーク時計を物色する場合には石数を確認し、7石あればクォリティの高い時計といえます。しかし1940年代から技術の進歩から石数が増加し始め15石、1950年代に入ると19石の時計が主流になります。

そして現代に入ると機械式時計の質の高さを競うようになり、現在は実質的に意味のある石数は23石で十分であると考えられています。

特にアンティークの腕時計を収集している人や、機械式腕時計をコレクションしている人には、石数は時代と品質を映す鏡になるので注目しておくと良いです。

コレクションを選ぶ上で参考になる値は手巻き式腕時計で17石~19石、自動巻き式腕時計になると21~23石が大きな目安になるので参考にしておくと良いでしょう。

石にルビーが使われている理由

ルビー

さてその機械式時計にとってとても重要な穴石に使用されている宝石ですが、これはなぜルビーが使用されているのでしょうか。

前述のように穴石の素材として金属では小さな腕時計などには使うことができず、それに取って代わる硬度の高い素材が宝石だったのです。

しかし宝石と一口に言っても色々な種類の宝石がありますがなぜルビーなのか、これには立派な理由があります。

モース硬度という固さを測る数値がありますが、これはダイヤモンドが一番で10になります。次に硬いのがルビー・サファイアで9になります。

一見するとダイヤモンドが適しているように見えますが、ダイヤモンドは傷には強く、ルビーにこすりつけるとルビーに傷が入るほどダイヤモンドは強いです。しかしダイヤモンドとルビーをぶつけ合うと逆にダイヤモンドが割れてしまいます。つまり機械式時計の穴石という部品の役割に一番かなっていたのがルビーだったのです。

ルビーとダイヤモンド

しかしルビーは宝石で高価なのでいくら高級腕時計などに使うとしてもどこにでも使えるわけではありません。

ということは重要な箇所にのみ使われるのがルビーということになります。ここから機械式時計のスペックの高さを表すのが石数になっていきました。

このように非常に機械式時計の穴石に適した素材であるルビーですが、いくら高度に優れ摩擦や衝撃に強くても長い年月稼動し続けたら減ってきます。ですので機械式時計には穴石や歯車など精密な部品を正常に持たせるためにオーバーホールや点検、部品交換が必要になってくるのです。

そういった意味ではオーバーホールに定めている3年~5年の間には点検を必ず行うというのは非常に理にかなった期間となるわけです。

穴石にルビーが使われていない機械式時計もある

そこで機械氏時計を購入するときに注意思案くてはならないことは、ルビーを使用していない機械式時計も存在するということです。

アンティークに多いのですが腕時計の場合だとピンレバーウォッチといってロスコフ式脱進機を使ったものに見られますが、機械としての価値はものすごく下がるので注意が必要です。

耐久性をムーブメントに全く求めていないので、すぐ調子が悪くなったり最悪の場合は修理不能になることがあります。

この時計はムーブメントの壁面に英語で宝石を使っていないムーブメントですと書いてありますので、アンティーク時計に興味のある人は必ず確認して宝石を使っているムーブメントを採用している時計を選ぶようにしましょう。

ルビーを穴石にきちんと使っている機械式時計には必ず7石以上のルビーが使われており、それが歯車などの本当に必要な箇所に使われています。中にはフェイクで意味の無いところにルビーをごまかして入れている時計もあるのできちんとルビーが組み込まれている部分を確認しましょう。

石数をしっかり確認して目的に即した時計を見つけよう

セイコーアンティーク1950年

石数を確認することが機械式時計の品質に及ぼす影響は大きく、ある程度の時計の質を見極める要素になってくることは間違いがありません。

しかし、石数は多ければそれで良いということでは決してなく、適切な石数を持っていれば十分に高品質な時計はあります。

必要以上に石数が多い時計の場合は機械大きな余裕を持たせるか、装飾として取り付けられているものも少なくありません。

ですので選ぶ時計の種類によって石数を確認して選べば、適正な時計を見つけ出すことができます。

腕時計を例にとっていえば手巻き腕時計の場合は最低7石から17石まであれば安定した動作を約束してくれるでしょう。自動巻きになるともう少し石数が必要になり、19石から25石までが適正といえるでしょう。

クロノグラフやパワーリザーブの大きな時計、さらにトゥールビヨンのような複雑機構を持ったものであれば石数は多いに越したことはなく、超高級腕時計には124石の石数を持ったものもありますので、自分の欲する時計の内容や性能に合わせて機械式時計を購入する際には、石数も是非考慮に入れて選んで欲しいものです。

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