クォーツショックとは?どうしてスイスは生き残れた?

カテゴリ:知識・雑学

腕時計の歴史を語る上で外せないクォーツショックはご存知でしょうか?

腕時計の始まりは機械式時計から始まっています。

その機械式時計をつくる有名な国と言えばスイスです。

現在も、ロレックス、ゼニス、タグホイヤー、など名だたる高級腕時計ブランドがスイスを拠点とし活躍をしていますね。

クオーツショックが起こるまでのスイスの実態は、時計作りの先進国であったイギリス、フランス、アメリカと技術面においても同じレベルの存在でした。

ここから、クォーツショックを乗り越え現在も高級時計のメッカと言えばスイスと言われる理由をお伝えしていきます。

クォーツショック前のスイスとアメリカ

1901年の始めは、スイスはアメリカと同等の生産国でもありました。

しかし、生産量、均質な腕時計を作り出す技術面では、アメリカが成功していた工業化、大量生産化には敵わず、スイスよりもアメリカの方が優れていたと言う見方もあります。

それから、第二次世界大戦が始まります。

アメリカやイギリス等の戦争の関係国の産業は、軍事用を制作する事になり時計の生産は手薄になりました。

一方中立な立場であるスイスは、敵、味方は関係無く、軍事用の時計を輸出しています。

戦争によって、スイス時計の産業の需要が高まりました。

また、戦争関係国の国内市場にもスイス製の腕時計は出回る様になり、スイスの腕時計は世界一の品質と最高級品としての位置を確保する様になります。

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クオーツショックの始まり

セイコーの初代アストロン

これまで順調だったスイスの時計ですが、ここからクォーツショックが始まります。

日本のセイコーは、世界初の実用化されたクオーツ時計の開発に成功します。

1967年の段階ではスイスのCEH社との競争となっていましたが、その後、日本のセイコーがタッチの差でクォーツ腕時計の開発に成功したのです。

1969年12月セイコーが発売したクォーツ時計が「セイコー クォーツ アストロン」です。

翌年、1970年4月には、CHE社のラドーや、オメガ、ブローバ等のブランドもバーゼルフェア(スイスで行われる世界最大の宝飾、時計の見本市)にクォーツ時計を出展しています。

ここから凄いスピードで、時計業界はセイコー製クォーツを受け入れ、世界の時計市場を制覇していきます。

その一方ではセイコーがクオーツ時計を開発した事により、それまで順調だった機械式のスイス時計が急激に衰えていきます。

時計業界は急速なクォーツ化が始まりました。

クォーツクライシスの始まり

ダニエルウェリントン偽者

「クォーツ・ショック」から「クォーツ・クライシス」になって行きます。

クライシスとは危機という意味です。

まさに、スイスの機械式時計は危機的な状況に置かれる事になっていきます。

機械式時計はもちろん、機械式ムーブメントの需要は急激に減りました。

スイスの時計産業は家族経営の時計メーカーも多く、廃業に追い込まれました。

その当時、15万人いたスイスの腕時計関係の仕事をしていた職人やスタッフ等は3万人まで減少する事になったのです。

ただし、資金力のある有名ブランドはこの苦境を我慢して、クォーツには距離感を保ちつつ機械式の高級腕時計を作り続けました。

中にはクォーツ時計も作ったブランドもありますが、機械式時計を作る事を辞める事はしなかったといわれています。

1980年以降になると、機械式時計の人気が復活します。

思いがけない機械式時計の人気の復活に喜んだのはスイスです。

ムーブメント(時計中身)の生産量は世界的に見てもクォーツ時計が中心になのでセイコーが最も多く一人勝ちでした。

ですが、生産数を増やして安価な値段で購入できるクォーツ時計は高級路線の視点からは外れていきました。

「高級」と言う視点の時計を求める人々の間では、機械式時計の方がクォーツ時計よりも評価が上回る結果となったわけです。

職人が手作業で作り上げる、複雑で繊細な構造の機械式時計の方が高級感を求める人の目に止まらないはずはないですよね?

そして、スイスの機械式時計の復活が始まったのです。

スイスブランドのグループ化

スウォッチグループ銀座

なんとか持ち堪えていた家族経営のブランドの多くは、皆で集まり企業グループを作ります。

その企業グループは後に時計だけではなく、ジャンルを超えた企業になりクライシス(危機)に耐える体制になっていきました。

今現在では、スイス時計のトップブランドは、ラグジュアリービジネスのグループに属しているブランドが多くなってきています。

以下大きな企業グループになります。

LVMHグループ

タグホイヤー銀座

LVMHグループはルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシーが合併した企業です。

このグループ内にはタグ・ホイヤー、フレッド、ディオール・ウォッチ、ショーメ、ウブロ、ゼニス、ブルガリ、ルイ・ヴィトン等が属しているグループです。

リュシュモングループ

ヴァシュロン・コンスタンタン銀座

リュシュモングループは南アフリカの実業家が設立したグループです。

このグループ内にはカルティエ、ヴァンクリーフ&アーペル、A.ランゲ&ゾーネ、ボーム&メルシエ、IWC、ジャガー・ルクルト、パネライ、ピアジェ、ロジェ・デュブイ、ヴァシュロン・コンスタンタン、等が属しています。

スウォッチグループ

スウォッチグループ 銀座の店舗

スウォッチグループはスイスの時計産業を救済したと言われるニコラス・G・ハイエックが設立したグループです。

このグループ内には、ブレゲ、グラスヒュッテ・オリジナル、オメガ、ブランパン、ジャケ・ドロー、ロンジン、ラドー、ティソ、ハミルトン、ミドー、カルバン・クラインウォッチ、スォッチ等が属しています。

スォッチは、クォーツショックでスイスの時計産業が危機的な状況の時に、デザイン性に優れ、機能的にも良い安価なスォッチ時計を発売してスイスの時計産業を助けました。

まとめ

上記の様に、多くのブランドはグループに属していますが、独立を貫いているブランドもあります。

パテックフィリップ、ロレックス、オーデマピゲ等です。

現在のスイスには、グループに所属する事で安定した時計作りができるブランドと、少数ですが独立して個々で生き残っているブランドで分かれています。

どちらにせよ、スイスブランドの時計は高級志向の時計として現在も変わらずに誇れる位置付けになっているのは嬉しい事ですね。

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