ツインバレルの時計って何?どんなブランドが作っているの?

カテゴリ:知識・雑学

機械式腕時計は様々な精密部品が調和し、見事な動作によって時を刻む古い方式ながら現在でも愛好者の多い構造の腕時計です。

PR

機械式腕時計の構造の進化

長い歴史の中でクォーツ式という時計の概念を変えるような大発明の後も機械式腕時計は進化を止めず、独自の発達を遂げています。

その機械式腕時計の歴史の中で常に大きなテーマとなっていたのが、一度巻上げを行ったゼンマイの駆動時間をいかに延ばして動き続けることができるかという駆動時間の長期化があります。

黎明期のゼンマイの駆動時間は30時間程度しかなく、一日しか腕時計を動かすことができませんでした。

技術の進化によって今まではゼンマイを収める香箱が一つで駆動していましたが、さらに長時間の駆動を実現視するためにゼンマイを収める香箱を二つにしたらどうかという発想が生まれました。

ツインダブルの時計のムーブメント

引用元:https://www.fratellowatches.com/watches-pencils-double-barrel-movements

これをツインバレル方式といい腕時計の長い歴史の中で画期的な発明といわれています。

ツインバレルという革新的な技術

この機械式腕時計の駆動時間を長くするという非常に難しいテーマに挑みそれを現実のものにした天才時計技師がアブラアン・ルイ・ブレゲで、彼は世界で始めての自動巻き機構を発明し、さらに重力を平均化することで時計の精度を向上させるというトゥールビヨン機構も発明し、腕時計の進化を200年早めた人物といわれています。

その彼が次に挑んだ画期的な発明が機械式腕時計のゼンマイ駆動時間を大幅に長くするというツインバレル機構です。

それまでの腕時計のゼンマイは香箱という小さな箱にゼンマイが収められそれをリューズで巻き上げることによってゼンマイを巻き取り、その力で時計の針を動かしていました。

しかし、香箱ひとつでは駆動時間を30時間程度確保するのが精一杯で一日一回リューズを巻くのを忘れると次の日には時計が止まってしまうことがありました。

そこでブレゲは香箱とゼンマイを高度な技術で小型化することに成功し、今まで一つの香箱しか収めることができなかった腕時計のケースに2つの香箱を収めることができるようになりました。

これによってゼンマイの数が倍になり今までの駆動時間を倍以上に伸ばすことができるようになり、実に60時間以上のタイムリザーブを可能にしました。これを実現するには腕時計全体の部品も小型化する必要があり、ブレゲの持つ天才的な技術があったからこそツインバレルは完成したといってよいでしょう。

このツインバレル機構を搭載した腕時計は瞬く間に世界中の話題になり、数多くの優れた腕時計技術士がこのツインバレルの技術を習得するために研鑽を積み、現在では機械式腕時計に無くてはならない機能として認知されています。

ツインバレル機構を搭載している有名メーカー

世界で始めてツインバレル機構を搭載した腕時計はブレゲのクラシックツインバレルでこのモデルは現在も復刻モデルとして手に入ります。

ブレゲのクラシックツインバレル

ちなみに元総理大臣の麻生太郎さんが付けている時計です。

それからは各有名腕時計ブランドがこぞってツインバレルを搭載したモデルを開発するようになり、有名なところではオメガが1960年代にコーアクシャルムーブメントという耐磁ムーブメントを開発した時期からツインバレルをムーブメントに採用するようになり、このムーブメントを搭載したモデルが数多く発売されています。

さらにツインバレルを採用しているブランドには枚挙にいとまがなく、ランゲ・アンド・ゾーネ、パネライ、アルカフトゥーラ、ファーブ・ルーバ、日本ではセイコーなど高級腕時計ブランドのいまやほとんどがツインバレル機構を採用し、さらに研究を続けています。

今後は機械式腕時計の世界標準基準としてツインバレルが主流となるでしょうし、更にこの機能は進化を続けるものといえます。

ツインバレルという芸術的な技術の結晶

ツインダブルの時計のムーブメント

引用元:https://www.fratellowatches.com/watches-pencils-double-barrel-movements

ひとつの腕時計のケースの中に複数のゼンマイを搭載するという発想がまず大きな革命への第一歩となり、それを実現化したのが天才腕時計技師ブレゲの超絶技巧が成し遂げた精密部品の超小型化にあります。

ツインバレルのように香箱を一つのケースに2つ搭載することはスペース面で大きなリスクがあり、従来までの技法では時計本体が大型化してしまうので実用面で劣ることになってしまいます。

そこでブレゲは歯車やテンプなど精密部品の更なる小型化に取り組みます。さらに脱進機とツインバレルの間に動力制御を行うシステムが必要になりますので、香箱内のゼンマイが一定の負荷で動き続ける必要があるのです。

こうして一定の力が輪列から脱進機、そしてテン輪に送られトルクが安定したまま運針に動力が伝わることになり精度が保たれたままロングパワーリザーブを確保することができます。

このツインバレルの発明によって現在は最低でも60時間、約3日間巻上げから時計がストップするまでの動力を確保することが常識になっています。

このロングパワーリザーブに関しては現在もなお研究が進められていて、腕時計の駆動時間はどんどん延長しています。

ロングパワーリザーブの更なる延長

このロングパワーリザーブに関しては長い年月を経て様々な改良や進歩が見られ、シングルバレルの腕時計では香箱を大形にしてゼンマイの巻き数を増大するという手法もとられ、60時間を標準としていたパワーリザーブは70~80時間平均に向上します。

するとそのゼンマイの巻き数を増やす技術がツインバレルにも応用され始め、香箱の大きさを変えずにゼンマイの巻き数を増幅する技術が開発され100時間を越えるロングパワーリザーブが出現しました。

すると平均3日間といわれていたパワーリザーブの標準が現在では5~7日間になり、このあたりで限界値ではないかといわれていた矢先、2019年に雲上高級腕時計ブランド、ランゲ・アンド・ゾーネが31日間のパワーリザーブを搭載したモデルを発表し、周囲を驚かせました。下の写真になります。

ランゲアンドゾーネの31日間のパワーリザーブ

A. Lange & Söhne caliber L034.1

こういった機械式腕時計の動力の長時間化に伴い、ゼンマイの残量を示すパワーリザーブインジケーターを搭載した腕時計が多くなり、各ブランドが独自の表示方法で開発しておりデザイン面でも従来とは変化が生まれてきました。

ただ、このパワーリザーブインジケーターを動作させるには香箱と精密に連動する減速機構が必要になり、決して単なる文字盤上のデザインではない高度な技術が要求されます。

ツインバレルから始まったロングパワーリザーブ

ブレゲが200年は進ませたといわれる腕時計の進歩ですが、この数百年で機械式腕時計は劇的な進化を遂げ腕時計史上最も革命的な発明であったクォーツ式に迫る勢いの進歩を遂げています。

まず精度面の向上が著しく進歩し高級腕時計の中にはクォーツ式に迫る精度を持っている機械式腕時計もあります。

さらにクォーツ式に比べて駆動時間の面で不利だったのがロングパワーリザーブの進歩で大きく変革の時代を迎え、長時間駆動可能な機械式腕時計が増えています。

これにはやはりブレゲのツインバレルの発明が大きなきっかけとなり機械式腕時計の大きな進歩が実現したと言って良いです。

ブレゲのこの発想なくしては機械式腕時計のロングパワーリザーブは実現しなかったといっても過言ではないでしょう。

これ以後もロングパワーリザーブの技術は進化を止めることはなく、近い将来31日ロングパワーリザーブが標準になる日もそう遠くはありません。機械式腕時計の魅力に目覚めた方は、ツインバレルを搭載しているかどうかといった点にも注目して腕時計を選んでみてはいかがでしょうか。

Share

この記事が役にたてばシェアして下さいpublic

Tag

Comment

コメントを残す

* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。
メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。

CAPTCHA


前の記事
次の記事

カテゴリー

Tag

同じカテゴリの記事