機械式時計をどのくらい巻いたら良いか説明する前に少し構造の話に触れとくとイメージしやすいかと思います。
機械式腕時計を楽しむためには腕時計はどうやって動くのかといった、基本的な部分を知ることが大切にになります。
現在はクォーツ式電池時計が圧倒的な主流になっているので、機械式腕時計を持っていても意外とその構造は知らない人が多いです。
機械式腕時計は動力をゼンマイという薄型の金属帯を巻き上げてそのゼンマイがほどけていく力を利用してテンプから歯車へと伝えられ、最終的に長針・短針・秒針を動かし時刻を刻む仕組みになっています。
そして時刻の精度を調節するためゼンマイよりより薄くて小さなヒゲゼンマイとそれを収めるテンプが振動する事で時計の正確さを調節します。
ゼンマイが解け終わると動力が伝わらなくなるので時計自体は動作を停止し止まってしまいます。
再び動力を腕時計に与えなくてはいけないのでリューズでゼンマイを巻き上げて巻き止めになるまで巻き上がったら時間を合わせなおして再び正確な時間が刻まれます。
手巻き腕時計の場合にはゼンマイが解けると常に再びゼンマイを巻き上げる必要があり、手間がかかります。逆に自動巻き腕時計の場合は腕の振動でゼンマイを巻き上げる振り子が付いているので、常にリューズを巻き上げる必要はありません。
このように機械式腕時計を動かすにはゼンマイが一番重要な部品であり、これを巻き上げてほどける力を利用して腕時計が動いているということが原理の基本中の基本になります。
このゼンマイが経年劣化で弱ってしまったり、力を加え過ぎて切れてしまった場合にはリューズを巻いてもゼンマイは巻けず空回りするので、ゼンマイ交換が必要になります。ゼンマイが切れてしますと故障したと焦ってしまいがちですが、ゼンマイは消耗品と考えて良いです。
すでにリューズが空回りしたり、リューズを巻いているのに駆動時間が短い場合はこちらの記事、機械式時計ゼンマイ切れ?リューズを回しても空回り。を参考にしてください。
腕時計のゼンマイの始まりは古い昔に鋼を加工する技術が発達してからのことで、それ以来腕時計の動力源として鋼を薄く伸ばしたゼンマイが発明されました。今でも変わらぬ動力として機械式腕時計に使われています。
このゼンマイを香箱という数センチの小さな箱に収納し、リューズを使ってゼンマイを巻き上げるのが基本的な機械式腕時計の動力確保の方法です。
しかし手巻き式腕時計に関しては巻き上げの回数には限界があり巻き止めが必ずあり、必要以上に巻上げを行いゼンマイに限界が来てしまうと、過度な力が加わりゼンマイが切れてしまいます。
したがって巻き止めまでゼンマイを巻いてしまってリューズが動かなくなったら直ちに巻上げを止めてリューズを逆方向に数回戻します。これによって秒針が作動し始め手巻き式腕時計は動作を開始します。
できるだけ決まった時間帯を決めてゼンマイの巻上げを行うほうが時計の精度が安定します。手巻き時計の場合は習慣付けると良いと思います。
では、どのくらいまで巻き上げると手巻き腕時計は一番良いのかということになりますが、一昔前は巻き止めまで巻き上げるとゼンマイに負荷がかかりすぎるので良く無いという人もいましたが、まったく理由がないことでもありません。ゼンマイが巻き止めまで巻き上がっている状態というのは最もゼンマイに強く負荷がかかっている状態であり、部品にとって一番負担を強いている状態であることに違いはありません。
しかし、あくまで余裕を持って巻き上げた状態と比較したらというお話ですので、巻き止めまで巻き上げることを避けた場合にはパワーリザーブが短くなるのでそれがけ時計は早く止まってしまうということになりますので、ここは個人の好みが分かれるところでしょう。
ですので、巻き止めまでゼンマイを巻くことに慣れていない人はそこそこのパワーリザーブを持っている腕時計なら一日中動かすためには4~50回ほど巻き上げておけば、日常使用には十分でしょう。
では自動巻上げ式腕時計の場合はどうなっているかというと動力にゼンマイを使用するところや基本構造はまったく同じですが、ローターという振り子が身につけている人の動きで左右にふれ、自動的にゼンマイを巻き上げるという方式が基本になっています。
ですので自分でゼンマイを巻き上げる必要がないのでまき止めまで行くとローターが反応し過剰な巻上げを防ぎますので全く巻き止めを気にすることなく使用することができます。
自動巻き腕時計には手巻き機能がついているものと付いていないものがあります、リューズを巻く必要は無いのですが、だいたいの人は手巻き機能が付いている腕時計の場合、ある程度リューズを回して、後は身に着けておきローターの力でゼンマイは巻き上げています。私はリューズで巻き上げる事はしていません。
手巻き機能のついていない自動巻き腕時計の場合は時計自体を左右に振ることでローターを動かし、ある程度巻き上がったら身に着けてローターの動きでゼンマイが巻き上がりますのでそのまま使用できます。
基本的操作は自動巻き腕時計のほうが便利ですが、パワーリザーブを自分で把握しておきたい人などの場合は手巻き式腕時計のほうが実用的でより向いているといえるでしょう。
ゼンマイの巻き止め以上に巻取りを行ってしまうのはもちろんゼンマイに大きな負担をかけ、ゼンマイの切断や大きな故障の原因になるので良くないですが、では一番最適なゼンマイの巻上げはどの程度の巻き上げでしょうか。
自動巻き腕時計の場合はローターが巻上げを行ってくれるので巻き止め以上にゼンマイを巻いて切断してしまう可能性は無いといえますので、この辺に関しては気にやむことは無いといえます。
一方手巻き式腕時計の場合には巻き止めは非常に重要な部分になってきますので、巻き止めよりリューズを巻いてしまうとゼンマイの切断や大きな故障の原因に間違いなく繋がりますので、巻き止めを感じたらすぐに巻きを止めたほうが良いです。
ですので巻き止めによるトラブルを避けたい人は7割程度のゼンマイの巻上げ、一般的な手巻き腕時計であれば4~50回巻き上げておけばその日の使用には全く問題はないでしょう。そして毎日決まった時間帯にリューズを巻き上げる習慣さえ付ければ安心して使えますので試してみても良い方法でしょう。
いずれにしてもゼンマイに過度な負担を与えなければ、しっかり時計は動作してくれるのでワンポイント抑えてから機械式腕時計は使用するようにしましょう。
腕時計の発祥でありながら現代も人々の心を魅了してやまない機械式腕時計ですが、その大きな魅力として敢えてこの現代にゼンマイの巻上げや手間のかかることが道具としての魅力になって多くの人が機械式腕時計の魅力に繋がっているという印象があります。
クォーツ式腕時計の登場で機械式腕時計の需要は大幅に減って、一時期は機械式腕時計は絶滅するのではないかという危惧が世界中に広まり、マニュファクチャーを大切にしてきた企業は大きく衰退する事になりました。
しかし、各企業の地道な努力が実を結び、1990年代になって再び機械式腕時計の魅力が認知され、機械式腕時計の老舗ブランドが再び脚光を浴びることになり、機械式腕時計の再ブームが訪れます。
その背景には機械式腕時計のただ単に時刻を刻む道具に留まらない今まで隠れていた魅力にスポットが当てられ、腕時計の愛好家が好んで機械式腕時計を愛用するようになったことで今まで機械式腕時計の魅力を知らなかった世代にアピールし、若い世代の愛用者が大きく増加したことが要因になっていると考えられます。
この記事を読んでいる方のなかには若い方も多いかと思います。ぜひ機械式時計を楽しんでください。
またゼンマイを巻くという事はリューズを使う事になります。
時計の駆動に関わる調整や操作の大半はリューズで行うためリューズが唯一ユーザーとムーブメントを繋ぐ重責を担っています。
ムーブメントは多くの部品から構成される精密機械です。そんな多くの部品をリューズで、動かすため相当な負荷がリューズと部品ひとつひとつに掛かります。機械式時計の使い方をいまいち分かっていないかたは、是非下の記事も参考にしてみてください。
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