薄型機械式時計の魅力とは?どんなブランドが力をいれてる?

カテゴリ:知識・雑学

機械式時計のケース厚みはどのくらいか?

一般的な機械式時計のケース厚みは10〜15㎜前後です。

例を挙げると僕の私物時計ではケース厚みが実測13㎜になります。現代の機械式時計は基本、自動巻がほとんどです。

数少ない手巻き機械式時計の場合はもう少し薄く仕上げることができます。この理由は自動巻ムーブメントには手の動きでゼンマイを巻き上げるローターを組み込む必要があり、そのため厚みが増えます。

以前と比較すると自動巻ローターを搭載したムーブメントはかなり薄くなったといわれます。

1940年〜50年代の自動巻ロレックスの通称「バブルバック」、これは初期型の自動巻時計で、泡のように膨れあがった裏蓋を持った当時のモデルの愛称です。

しかしこれも改良などで「バブルバック」は泡のように消えていきます。

当時バブルバック の厚みは12㎜前後でした。

この数字だけ聞くと現在の機械式時計とさほど変わらず。しかし厚みは数字以上にあった印象があります。これは裏蓋がぷくっと膨らんだ形状であること、当時の時計ケース直径が30㎜少し超えるサイズで、現代の40㎜径の時計と比較するとかなり小さく、厚みが大きく感じたためと推測できます。

いずれにしても現在も自動巻機械式時計のケース厚みは12~15㎜前後、実用性を考えるとやはりもう少し薄い方が腕時計として使いやすいことは間違いありません。

そのため各ブランドはムーブメントのケース厚みを薄くする設計改良を日々目指しています。

薄型時計の厚みはどのくらい?

一般的に「薄型」と言われる機械式時計はケース厚みが、10㎜を切る時計を指すといわれます。

ムーブメントでは手巻きやクオーツの時計の方が、厚みを薄く仕上げることができます。写真の私の私物、SKAGENの時計はクオーツで厚み5㎜に仕上げています。

このくらい薄いとシャツの袖の中に時計をスッとおさめることが可能です。しかし機械式自動巻ムーブメントでも「薄型」はあります。そして「薄型」機械式時計造りに積極的なブランドも実はあるのです。

どんなブランドが有名か?

薄型機械式時計に力を入れているブランドは「ピアジェ」「ブルガリ」そして「ジャガールクルト」などが有名です。

これら3ブランドの特徴として、全てマニュファクチュール(ムーブメントの自社生産ブランド)であることが挙げられます。薄型ムーブメントはムーブメント専業会社が提供する汎用ムーブメントより手の込んだ機械機構が特徴です。

ムーブメントが薄くなると耐久性が落ち、多くの時計ブランドにエボージュ(半製品ムーブメント)として、納める専門会社の立場からすると避けたい物でした。耐久性がある、厚いエボージュの方が、より多くのブランドへムーブメント提供ができます。

全てのブランドが薄型ムーブメントを望むのであれば量産でき、コストを下げることができます。しかしここ30年ほど、時計ブランドはデカ厚時計がブームでした。

ケース径は42㎜以上で厚みは15㎜以上の時計が増えていました。またスペックを求めるユーザーが多かったこともあり、防水性やロング・パワーリザーブなどの機能を持った製品が必要で、時計の厚みは増す一方でした。

そういったマーケットのためムーブメント専業会社は薄型ムーブメント製造を避けていたのです。

これら3社以外でもパテック ・フィリップやパネライ、オーデマピゲも薄型機械式時計を製造しています。そしてこの3ブランドもやはりマニュファクチュールです。

薄型時計製造は機械式時計のあらゆる技術が集約されている製品であることは間違いありません。

ピアジェ アルティプラノ スケルトン G0A34116

ピアジェの薄型機械式時計アルティプラノ スケルトン G0A34116

引用元:www.rasin.co.jp

さて具体的なモデルを紹介します。ピアジェは1874年創業のマニュファクチュールです。

マニュファクチュールゆえ薄型時計ブランドを多く製造し、ジュエリーをふんだんに使用した高級時計を得意としています。

ピアジェの最薄時計altiplanoアルティプラノ

創業者ジョルジュは19歳の頃ブランドを家族が経営する農場の中で創業します。当時スイスの山村でよく見られた「冬の間の時計造り」でした。しかし腕の良い時計職人だった創業者の評判を聞きつけ、多くの時計ブランドから仕事の依頼が来るようになったのです。しかしこの頃は部品のみの製造でした。

ブランドが大きく変化したのが、創業より半世紀が経過した1920年代からです。ポケットウォッチと腕時計製造を開始して、大型機械設備を導入し部品メーカーからマニュファクチュールへ変貌します。1995年にはピアジェは「キャリバー9P」を開発、ムーブメントの厚みが僅か2.0㎜という「最薄手巻きムーブメント」をリリースします。1960年には自動巻の極薄ムーブメント「キャリバー12P」の開発も成功させます。

ピアジェ アルティプラノ スケルトンG0A34116はケースを加えても薄さ僅か6.6㎜しかありません。薄型ケースとシースルーバッグを組み合わせた大胆なデザイン、ゴールドとブラックのカラーリングもシックでセンス良い外観が特徴です。宙に浮いたように見えるムーブメントでミステリアスなイメージを醸し出す時計になります。

下で紹介している時計は同じアルティプラノシリーズのG0A38132ですが厚みがわずか5.34mmになります。

ピアジェ G0A38132 アルティプラノ(スケルトン)

ブルガリ オクトフィニッシモ

ブルガリの薄い機械式時計オクトフィニッシモ

ジュエリーブランドのブルガリは2012年に初代オクトフィニッシモを発表する前にジェラルドジェンタの時計ブランドを買収しています。かつてロイヤル・オークとノーチラスをデザインしたデザイナーの名を冠したブランドを統合して発売したのがこのオクトフィニッシモです。八角形と円を組み合わせ、エッジが効いた幾何学的模様は独特な印象を時計に与えます。

ブルガリの時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタ

引用元:https://www.webchronos.net/iconic/17815/

ジェラルド・ジェンタは異なる時計ブランドで、傑作モデルをデザインしてきた時計デザイナーです。このオクトフィニッシモは彼のデザインではありません。しかしロイヤルオークやノーチラスを彷彿させるこのモデルは彼の哲学が反映されたモデルであるといわれています。

ブルガリの薄い機械式時計オクトフィニッシモ

2019年のオクトフィニッシモは初代の八角形+円形は継承しています。しかしそれに満足せず新しい要素を取り入れています。特にブルガリが拘っているのが軽量化と合わせて、実用性です。まずブレスとケースをフラットに仕上げたことで、引っかかりが無くストレスを感じない装着感が楽しめます。さらに素材にチタンを採用して軽量化を進め、ブレスも自社生産しています。時計専業メーカーはブレスレットを外注することが多いものです。しかしブルガリは装着感にこだわるため、全て自社で完結させ数値に現れない部分に拘っています。ジェリーブランドらしい時計界の常識に囚われない時計造りを見せてくれました。最新モデルも建築家、安藤忠雄とのコラボなどを発表、常にチャレンジしているアグレッシブさを感じさせます。

ブルガリ BVLGARI オクト フィニッシモ BGO40C14SLXTAUTO 新品 時計 メンズ

ジャガールクルト マスター・ウルトラスリム・スモールセコンド

ジャガールクルトの薄い機械式時計。マスター・ウルトラスリム・スモールセコンド

薄型で有名なブランドはなぜか時計専業ブランド以外の2社です。もしかしたら時計専業ブランドは「薄型時計」を軽視しているのではとも感じます。

しかしジャガールクルトは専業メーカーの中でもこれまで薄型時計を多く発売している、ブランドです。モデル名にもウルトラスリムと名付けている点もブランドの薄型に対するこだわりが感じられます。

ジャガールクルトの最薄機械式腕時計マスター・ウルトラスリム・スモールセコンド

このモデルはケースサイズが39㎜、ムーブメントの薄さ3.98㎜に仕上げ部品数は223個です。サファイアクリスタルのケースバッグから工芸品らしい芸術的な動きを楽しむことができます。そして時計の薄さはわずか8.1㎜です。ムーブメントはジャガールクルトの自社製で、薄型機械式自動巻でもパワーリザーブは43時間と通常の時計と変わらないスペックになります。

ケース直径40㎜のケースに最新のキャリバー929シリーズを搭載した同モデルではケースの厚みはさらに1㎜縮め、7.45㎜までに薄く仕上げています。しかしその狭くなった空間になったにもかかわらずパワーリザーブは逆に72時間までアップさせた逸品です。

ジャガールクルトは創業以来エンジニアリングの哲学のもと時計造りを続けて来たブランドです。その高い技術から同業者からも信頼が高く、ヴァシュロン・コンスタンタンなどへムーブメントの提供をしていた時期もあります。時計造りにおいてもエンジニアリング的な品質管理を自社製品へ課しています。そのひとつが「1000時間コントロールテスト」です。これはジャガールクルト独自の時計の耐久検査試験で通常のクロノメーター検査とは違い、ムーブメントをケーシングした状態で行うより実態に近い厳しい検査方法になります。

しかし彼らは品質や最新技術だけでは無く、スイス伝統のクラフトマンシップに基づく手作業による時計造りも大切にしています。例えば丁寧な細かい作業で植字されたインデックス、これはどんな精密な工作機械を使用しても人間の手による作業には敵いません。ジャガールクルトはそんな伝統技術を現代社会にもしっかり残し、後世に伝えているブランドです。

ジャガールクルト マスター ウルトラスリム スモールセコンド

オーデマピゲ ロイヤルオークパーペチュアルカレンダーウルトラシン

オーディマピゲの薄い時計オーデマピゲ ロイヤルオークパーペチュアルカレンダーウルトラシン

コンプリケーションウォッチで世界最薄はオーデマピゲのモデルです。公表されている数値はケース厚みが6.3㎜になります。これを実現できたのは三層からなるカレンダー機能を一層にまとめた彼らの高い技術からです。地上にある元素の中で軽く耐久性に優れた金属チタンと腐食に強いプラチナを組み合わせた時計、唯一の難点は高額であることと、堅いゆえに加工が難しいことです。

オーデマピゲの最薄ロイヤルオークパーペチュアルカレンダーウルトラシン

しかしここ20年ほどの間の金属加工技術の進歩と削り出した表面がデザイン的に優れていることで採用に踏み切る時計ブランドが増えています。オーデマピゲはこの素材を使い高級ブランドらしいコンプリケーション機能を搭載しても、これだけの薄さを実現しています。やはり薄型時計の「横綱」はこのブランドなのでしょうか。

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薄型時計が今後のトレンドになる

かつてパネライが火付け役となり数10年以上続いたデカ厚時計ブームは少し終息傾向に向かっています。この流れはピアジェやブルガリといった時計専業ではないメーカーが固定概念に囚われない発想のもと生まれた、まさに「ムーブメント」です。当然専業メーカーもこれまでに培った技術を集め衝撃的な薄型時計を近い将来、リリースしてくるでしょう。

既にオメガはシーマスターアクアテラに「ウルトラライト」という重量55グラムの軽量モデルを2019年末に発表、2020年中の発売を予定しています。薄型で先行しているジャガールクルトは同じリシュモン。傘下のIWCやヴァシュロン・コンスタンタン、パネライと提携する可能性だってあるでしょう。今後の、時計専業メーカーの薄型時計の「逆襲」をぜひ期待しましょう。

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